当ブログではATS-PT使用開始情報についてお伝えしてきましたが、平成22年度分の工事が完了し、3月12日のダイヤ改正から1週間ほど経つと、運用区間ではすべての車両がATS-PTを使用するようになりました。すっかりPTも日常の風景になりましたね。
さて、前回からしばらく時間が経ってしまったATS-PT講座ですが、今回はATS-PT地上子について取り上げます。
みなさんもよくご覧になると思いますが、右の写真がATS-PT地上子です。白い樹脂製のケースの中にトランスポンダが入っており、車両側の車上子に対し、電波を用いてデジタル電文を送信します。
さて、PT形の地上子は、他のATS-P地上子と比べてかなり大振りです。JR東日本や西日本のP形地上子はもっと小さく、枕木の幅に収まるほどの大きさなんですね。PT形地上子は他社のATS-Pと互換性がありますので、基本的な機能は同じなのですが、なぜこれほどケースが大きいのかはちょっと謎です。
ATS-P形地上子の特徴として、列車の運転方向を問わない「双方向対応」という特徴があり、2本のレールのちょうど真ん中に設置します。一方、旧来のS形(ST形含む)の地上子を右に示しますが、このようにレールの中心からオフセットして設置してあるんですね。
P形とS形地上子の違いを下の図にまとめてみました。旧来のS形は、車上子を進行方向左側に設置することになっており、対応する地上子も進行方向によって別々に配置してあります。
一方、P形は地上子も車上子も中央に配置されていますので、列車の運転方向を問いません。地上子は、進行方向にかかわらず、車両と通信ができます。これは、ATS-P形が符号処理装置(エンコーダ)によって、地上子の機能を状況に応じて変えられることが前提になっているためでしょう。連動装置と連携して、あるときは上り列車用、あるときは下り列車用にひとつの地上子の機能を変えられるわけですね。
ただしATS-PT形は、無電源地上子を多用してコストを抑えた廉価版のATS-Pです。無電源地上子については後で詳しく書きますが、あまり複雑な機能の切替はできません。このため、上り列車用に発している電文を下り列車が拾ってしまうこともありえます。そこでPT形では、車上子・地上子それぞれ進行方向に応じてA線・B線の属性を与えてあります。電文情報の中にA線・B線を区別する情報を含んでおき、旧来のST形と同様に進行方向によって区別しているわけですね。
ATS-PT形の地上子には以下の3種類の地上子があります。PT形で特徴的なのは、高価なエンコーダ式地上子を極力減らし、設置コストの安い無電源地上子を多用していることです。
地上子の種類 | 用途 | JB | エンコーダ | |
---|---|---|---|---|
エンコーダ式地上子 | 進路の複雑な場内信号機など | あり | 要 | |
無電源地上子 | 電文固定 | 速度制限など | なし | 不要 |
電文可変 | 閉塞信号機 進路の簡単な場内・出発信号機 |
あり | 不要 |
表中のJBは右の写真にあるジョイントボックスです。電文を切替える地上子へ通信ケーブルを接続するために設置します。では、各地上子について簡単に解説しましょう。
長くなりましたが、地上子の基本事項についてお伝えしました。次回(第4回)は、信号機の現示によって地上子はどんな情報を送っているのか、地上子はどのように配置されているのかをお伝えする予定です。