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帰ってきたyokeのブログ。JR東海運用情報の更新情報も兼ねています。
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2011年06月04日

ATS-PT講座の第6回目、今回は消去用地上子を取り上げます。前回の講座で解説したロング地上子・直下地上子があれば、パターン速度照査を行い、停止信号の手前で確実に列車を停めることができます。しかし、この2つの地上子だけでは円滑な運転ができないことがあります。まずは、その状況を見てみましょう。

ロング地上子・直下地上子だけだとどうなるか

停止信号を現示した場内信号機に列車が近づいて来ました。停止信号の手前600mにあるロング地上子が、停止位置までの距離を車上装置に送り、速度パターンを作ります。この講座をよく見てくれている方にはおなじみの図です。

ロング地上子でパターン発生

停止信号の前には、注意信号が出ていますので、列車は45km/hまたは55km/hまでに速度を落としています。このまま信号が変わらなければ、50m手前で停まるのが所定のルールです(上図の運転曲線)。

さて、ここで場内信号機が停止から進行、つまり赤から青に変化しました(下図)。信号が青になったわけですから、速度制限はもうありません。速度を上げても構わない規則ですが、ATS-Pはそうはいきません。そうです。パターンが残っているので加速できないのです。うっかり加速すると車上装置に残っているパターンに当たって非常ブレーキがかかってしまいます(下図(1)の運転曲線)。

途中で信号が変わってもパターンが残っているので加速できない

直下地上子を通過するまで、パターンは更新されません。加速できないどころか、停止位置に近づくほどパターンは厳しくなり、信号が青なのに逆に速度を落とさなければならない、こんな理不尽なことになってしまうんですね(上図(2)の運転曲線)。

途中でパターンを更新してくれる消去用地上子

そこで登場するのが消去用地上子。この地上子は、信号の上位変化に合わせて文字どおり余計なパターンを消去(正確には更新)してくれるものです。ATS-PTの場合、信号機から210m手前に設置するのが基本です。下の図のように、途中で変わった信号機の情報を車上装置に送り、パターンを更新してます。これにより再加速を可能にしたり、余計なパターンで減速を強いられることから解放されるわけですね。

消去用地上子はパターンを更新し、再加速を可能にする

ATS-PTの消去用地上子配置

上の図では210mの消去用地上子しかありませんが、210mを過ぎてから信号が上位変化した場合は役に立ちません。もっとたくさんの消去用地上子があれば、運転取り扱いを円滑にします。列車密度の高い首都圏のATS-Pは、場内信号機には5個(50m,85m,130m,180m,280m)の消去用地上子が、閉塞信号機には2個(85m,180m)の消去用地上子が設置されています。

しかし、ATS-PTはコストを抑えた廉価版です。そこまで多数の消去用地上子は配置していません。基本は210m手前のTR-210(RはResetの略)1箇所のみ。ただし、運転本数の多い路線や、停止信号に引っかかりやすい場内信号機には、地上子を増やしているところもあります。

運転本数の多い区間として、東海道線の岡崎~尾張一宮間、中央線の名古屋~高蔵寺間、この2区間については、閉塞信号機にはTR-210のほかにTR-85を増設。さらに場内信号機(場内相当の閉塞信号機含む)にはTR-400を追加設置している駅もあります。

その他の区間でも、場内信号機にはTR-85が設置されている箇所が多く見られます。

ATS-PT 場内信号機・閉塞信号機の地上子配置
地上子
の種類
信号機
からの
距離
東海道(岡崎~尾張一宮)
中央(名古屋~高蔵寺)
左記以外の区間
場内信号機・
場内相当の
閉塞信号機
閉塞信号機 場内信号機・
場内相当の
閉塞信号機
閉塞信号機
直下 30 TS-30 TM-30 TS-30 TM-30
消去用 85 TR-85 TR-85 TR-85
(必要に応じ)
-
210 TR-210 TR-210 TR-210 TR-210
400 TR-400
(必要に応じ)
- - -
ロング 600 TL-600 TL-600 TL-600 TL-600

さて、出発信号機に対する地上子配置も見てみましょう。

出発信号機の場合は、駅によって地上子配置がバラバラで、同じ駅でも下りと上りで違うことも少なくありません。TR-210はよく見かけるのですが、その他は列車の停止目標に合わせて消去用地上子を配置しているようです。列車が発車すると、すぐパターンを更新できるようにしてある、というわけです。とくに信号機に近い停止目標(0標など)には必ず近くに地上子を増設してあります。

出発信号機の消去用地上子

また、折り返し列車は地上子を通過するまでパターンを持っていないので、早めに地上子を通過する必要があります。このため、折り返し列車のある駅では、地上子をマメに設置してあります。名古屋駅の中央線ホームからは、ものすごい数の消去用地上子がごらんになれます(笑)。

動画で見る地上子

実際の地上子配置を動画で見てみましょう。ちょうどいい動画がyoutubeにアップされていましたので、貼っておきます。中央線の千種~高蔵寺間、セントラルライナーの前面展望動画です。昨年6月頃撮影されたものらしく、まだ旅客列車はPTを使っていない時期の動画です。ATS-PTの使用区間も新守山までですが、高蔵寺まで大半の地上子はすでに設置済みです。

JR東海313系8000番台 前面展望 千種⇒高蔵寺(セントラルライナー3号)

線路の真ん中に見える白い箱がATS-PT地上子。左に寄って設置してあるのはST地上子です。

千種の10両標・0標近傍に設置の消去用地上子をはじめ、閉塞信号機のTL-600/TR-210/TR-85/TM-30の並び、場内信号機にはTR-400が追加設置されているものも確認できます。なお、分岐器速度制限地上子やロング地上子を省略する場合など、まだ解説していないものありますが、これはまた追々説明していきます。


ATS-PT講座、長かった地上子の話(笑)はいったん休止して、次回(第7回)からは車上装置の話を取り上げる予定です。

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