とあるコラムによれば、させていただく症候群なるものが、新入社員世代に広がっているとか。「~させていただく」は、誰かの了承が必要な場合などに限られるのですが、「お伺いさせていただく」「出張させていただく」のように本来使うべきではない部分に使う人が多いとのこと。
そのコラムでは、新入社員教育がおろそかになっているから、との分析をしていますが、はたしてそうでしょうか。新人でなくても敬語を操れない人はたくさんいるんですよね(苦笑)。
尊敬語 | 謙譲語 | |
---|---|---|
する | なさる | いたす |
言う | おっしゃる | 申す 申し上げる |
食べる | 召し上がる | いただく |
行く・来る | いらっしゃる お越しになる |
参る |
私個人は、シンプルに使える基本敬語を知らない人があまりに多い、これが原因だと思うんですね。敬語は丁寧語・尊敬語(相手を敬う)・謙譲語(自分を下げる)からなりますが、とりわけ尊敬語・謙譲語の基本単語の認知度が低いようです。このため、変な回りくどい敬語が横行するのではないでしょうか。
右の表に知っておくとよい基本敬語を並べてみました。とくに覚えておきたいのは、「する」の尊敬語「なさる」と謙譲語「いたす」です。
現代の日本語は、漢字の熟語に「する」を付けて動詞(動作)を表す言葉がとても多くなっています。このとき、「いたす」を知らないと「させていただく症候群」に陥り、「なさる」を知らないと、「やってらっしゃる」だの「~やられてる」だの、なんだかちょっとエッチで物騒な響きの敬語(笑)になりかねません。
「~させていただきます」なんて言わなくても、「~いたします」は非常にシンプルですし、「なさいますか?」も耳に心地よく聞こえます。
言葉は時代とともに変化する、とはよく言いますが、シンプルでよく使うものに統一されるのが通例です。「させていただきます」とか「やってらっしゃる」とか、舌を噛みそうな言葉に変わっていくことはないでしょう。
間違った日本語の使い方で、よくやり玉に挙がるのがコンビニとファミレスです。「よろしかったですか?」とか「1000円『から』お預かりします」とか。私はこの二つは気にならない一方で、別の言い回しが引っかかります。次の店員のセリフを見てみましょう。
よくあるシチュエーションです。これは問題ありません。しかし、次のはどうでしょう?
預かるというのは、お釣りのある場合に、いったん多めに「預かって」、その後お釣りを「返す」のが前提です。つまり「ちょうど預かる」なんてのは、銀行に預金するならともかく、支払いではありえないんですね。ですから「ちょうどいただきます。」が正解。
この間違いは非常に多く、8割方はちょうどあずかってます(笑)。では、なぜこんなに間違いが多いのでしょうか。それが先ほど書いたところの言葉はシンプルでよく使うものに統一される、この傾向に沿ったものと考えています。
コンビニのレジでは、ぴったり払うケースより、お釣りを払うケースが比率として多くなります。この結果「いらっしゃいませ」「~になります」「おあずかりします」「お返しです」「ありがとうございました」が呪文のように繰り返され、条件反射から「おあずかりします」しか出てこなくなるのでしょう。