ネットでこんなニュースを見つけました。
電車の直流モーターに使っている「ブラシ」を供給している工場が、福島第一原発の避難区域圏内にあり、復旧の目処が立たないためとのことです。計画停電を実施している首都圏などでは、電車が正常に運行できない状況が続いていますが、地震に端を発する影響は西へと拡大しています。
ご存知の方も多いと思いますが、電車など鉄道車両に使われてきた直流モーターは整流子電動機と呼ばれ、ブラシと整流子が不可欠です。
モーターは、界磁と電機子と呼ばれる二組の磁石で構成されています。この二組の磁石が、引き合ったり反発したりする力で回るわけですね。ただし、モーターを回し続けるには、磁石のN極・S極を回転に応じて入れ換える必要があります。でないと、磁石が引き合ったところで停まってしまいます。そこで直流モーターでは、回転する磁石を電磁石とし、回転に応じて電気の流れる方向を変えて電磁石の極を逆転するようにできています。このとき、回転する磁石に電気を送るのがブラシ。整流子はスイッチの役目をして、回転に応じて電流の向きを変えます。
さて、ブラシと整流子は絶えず擦れ合っているので、定期的な交換が必要になるんですね。今回はこの消耗品であるブラシの供給が止まったことが問題となったわけです。
最近の電車は「かご形誘導モーター」や「永久磁石同期モーター」などの交流モーターが使われています。これらのモーターは、回転子に電気を送らなくても回るので、ブラシは構造上ありません。しかし、直流モーターを使った電車もまだまだ現役です。JR東海では、置き換えが進められている117系・119系のほか、211系・213系・311系などの省エネ車も直流モーター車です。地下鉄でも東山線5000系、鶴舞線3000系は直流モーター車。名鉄や近鉄も数多く走っています。
いまのところ、JR西日本以外で同様の発表はありませんが、今後ブラシの在庫状況によっては、同様の状況が当地でも発生するかもしれません。
4月6日、JR西日本はブラシの供給の目処が立ったとして、すでに実施していた金沢・和歌山・山陽地区などでの間引き運転の解消(8日から)と、11日から予定していた京阪神エリアの間引き運転中止を決めました。なんとかなったようですね。
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