旅客列車のATS-PT使用が、中央線などの一部列車で始まってから、約半月が経過しました。1月末現在の状況はどうなっているか、まとめてみました。
名古屋地区で旅客列車の使用が開始されているのは、中央線(山王信号場~中津川)、関西線(八田~河原田)、東海道線(尾頭橋~大府)となっています。現在、名古屋駅構内のATS-PT地上設備工事がまだ完了していないため、いくぶん中途半端な感じを受けますが、中央線・関西線については発表されている区間の工事がほぼ完了しており、旅客列車のPT使用が順次開始されています。東海道線は名古屋~大垣間の工事が完了していないので、武豊線直通列車のみPT使用となっています。
さて、今回は中央線についてまとめます。
中央線のATS-PTの状況図を以下に示します。青い線がATS-PT工事が完了している区間、黒い線が未完了の部分です。名古屋駅付近のわずかな区間を残し、今年度の目標である名古屋~中津川間の工事がほぼ完了。この間の旅客列車のPT使用が順次開始されています。
図中の「P→S」「S→P」は、右に示すATS切り替え標識です。中央線のATS-PTは、昨年4月下旬に山王信号場~新守山間で貨物列車の使用が始まり、山王~金山間および新守山~勝川間に切り替え標識が立ちました。その後、6月ごろに新守山付近の切り替え標識がなくなっており、中津川まで延長されたものと推測されます。
なお、現在も上り線には高蔵寺付近に「S→P」の切り替え標識が立っています。これは、愛知環状鉄道からの直通列車のためのものでしょう。高蔵寺駅の1番線は、愛環線の折り返し線となっていますが、中央線への直通列車も発着します。しかし、この1番線はATS-ST形のみが設置されており、P形に切り替わるのは中央線の本線に合流してからとなるためです。
ついでですから、SとPの切り替えについてお話ししておきましょう。
PT使用開始車は、運転席の電源を入れるとATS-Pの電源が入るとともに、ATS-STが立ち上がります。折り返し運転で運転席が変わる「エンド交換」を行った場合も同様です。下の図は313系の事例。P電源の表示灯が点灯するとともに、ATS-STの表示も点灯し、ATS-STによる防護を開始します。このとき、ATS-Pの表示灯は点灯しておらず、ATS-PT自体は機能していません。
事故 | 三相 | EB | ATS-ST | ATS動作 | |
P電源 | パターン 接近 |
ブレーキ 動作 |
ブレーキ 開放 |
ATS-P | 故障 |
すぐにATS-Pのモードに入らないのは、まだ地上子から電文を受けていないためです。つまり、情報がまったくないので、パターン速度照査のしようがないわけですね。そこで、とりあえずATS-STにしておくわけです。
さて、運転士が列車を走らせてATS-PT地上子(正確には信号防護用地上子)を通過すると、PT地上子から電文を受け取り、ATS-PTによる防護に切り替わります。折り返し列車のある駅では、ATS-Pによる防護をなるべく早く開始するため、各停止位置の直前にPT地上子を配置していることが多く、発車するとすぐにATS-Pに切り替わるのが一般的です。P形の工事が済んでいない箇所では、そのままATS-STで走行します。
ATS-PTに切り替わると、「ピンポン」とチャイムが鳴り、ATS-Pのランプが点灯。さらに、ST形の機能が停止し、ATS-STのランプは消灯します(下の図)。
事故 | 三相 | EB | ATS-ST | ATS動作 | |
P電源 | パターン 接近 |
ブレーキ 動作 |
ブレーキ 開放 |
ATS-P | 故障 |
ATS-P形は、このように通常のP形地上子を1つ通過するだけでATS-Pに切り替わるわけですね。ですから、S区間からP区間への切り替えも非常に簡単です。P電源も勝手に入りますからATS投入忘れなんてこともなく、安全な機構ですね。ただし、現在のようにATS-Pの工事をしたり、PTの本格使用が開始されていない状況では、かえってこの機能が仇になります。そこで、地上子にカバーを掛けたり、車上装置の機能停止や開放扱いを行っているわけです。
一方、P形からS形への切換は、「機能停止」の電文を送るP形地上子を通過することで、こちらも自動的に行われます。PT形が停止するとともに、ST形が機能を再開します。
中央線は神領区の車両が中心で、大半の車両がATS-PTの設置を完了しています。しかし、旅客列車のPT使用は徐々に拡大していくようで、まだ一部の編成に限られています。使用開始編成は運転席にATS-PT 使用開始のステッカーが貼られており、神領区所属車では313系の一部、383系の一部となっています。神領区でもっとも大所帯の211系5000番台は、現在のところ使用開始車が見あたりません。
番台区分 | 1000 1100 |
1500 1600 |
8500 | 3000 | 1300 |
---|---|---|---|---|---|
編成両数 | 4両編成 | 3両編成 | 3両編成 | 2両編成 | 2両編成 |
運用路線 | 中央線 | 中央線 関西線 |
中央線 | 中央線 関西線 |
中央線 関西線 |
全編成数 | 5編成 | 7編成 | 6編成 | 16編成 | 4編成 |
ATS-PT 使用開始 確認編成数 |
4編成 | 1編成 | 4編成 | 2編成 | 1編成 |
備考 (編成番号) |
B1 B2 B4 B5 |
B104 | B202 B204 B205 B206 |
B304 B307 |
B404 |
以上のように、神領区の313系は1000/1100番台および8000番台が半数以上で使用を開始していますが、その他はごく一部に限られています。運用が土日を含めて一巡し、問題がないことを確認しているのでしょうか。
なお、セントラルライナーに用いられる8500番台を除くと、中央線の313系は単独運用が少なく、大半は211系5000番台との併結運用です。さらに多くの場合313系が名古屋方に連結されるため、PTを使用している列車は必然的に上り列車が多く、下り列車は少ない状況となっています。
編成両数 | 6両編成 | 4両編成 | 2両編成 |
---|---|---|---|
全編成数 | 9編成 | 3編成 | 5編成 |
ATS-PT 使用開始 確認編成数 |
1編成 | 1編成 | 1編成 |
備考 (編成番号) |
A4 | A101 | A205 |
383系も編成種別ごとに1本ずつとなっています。