新聞報道などによりますと、名古屋市や名鉄などで2月11日から導入される電子マネー乗車券manacaに関する問い合わせが殺到しているそうです。
東海地方ではJR東海のTOICAがすでにあるのですが、JRを日頃利用しない人は「はじめての電子マネー乗車券」となることも多いでしょう。さらに、既存のSFカードであるトランパスや回数券が廃止となること、その見返りとして導入されるマイレージポイント制度がややこしいことなど、TOICAやSuicaとは違った複雑さがあり、利用者を混乱させているようです。
トランパス(ユリカ・SFパノラマカード)とmanacaの違い
まず、単純な比較をしてみました。違いがよくわからない、何が変わるかわからないという方は、ざっくりこの表に目を通してみてください。
トランパス(ユリカ・SFパノラマカード)とmanacaの比較(大人用)
|
トランパス
(ユリカ)
(SFパノラマカード) |
manaca |
カードの種類 |
磁気券 |
ICカード |
利用形態 |
使い捨て |
繰り返し使用 |
自動改札での利用 |
改札機に投入 |
改札機にタッチ |
支払い方法 |
プリペイド方式 |
デポジット |
不要 |
要 500円 |
おまけ(プレミアム) |
あり |
なし |
マイレージポイント |
なし |
あり |
販売額
(利用可能額) |
1000 (1000)
2000 (2200)
3000 (3300)
5000 (5600) |
1000 (500)
2000 (1500)
3000 (2500)
5000 (4500)
10000 (9500)
500 (定期券のみ) |
残高が少なくなったら… |
積み増し |
チャージ(入金) |
定期券の組込 |
不可 |
可能 |
紛失時の再発行 |
不可 |
可能 (記名式・定期券) |
お買い物 |
不可 |
可能 (一部の店舗) |
どうでしょう?「デポジット」などの聞き慣れない言葉や、販売額と利用額の関係に「え?」と思われた方もいると思います。では、そんな疑問にお答えしていきましょう。
manacaの種類と購入方法
TOICAやSuicaをお持ちの方には当たり前のことも多いと思いますが、manacaの基本について説明します。なお、manacaには小児用、割引用(障害者用)もありますが、ここでは大人用について説明します。
- 1. トランパスは使い捨て・manacaは繰り返し使用
- トランパスカードはこれまで使い捨てが基本でした。必要な額のトランパスを購入し、残高がなくなったら、また必要な額を購入するか、積み増しを行ないます。積み増しの場合も、新しいトランパスが発行され、古いカードは使えませんでした。
これに対して、manacaは何回も繰り返して使います。残高が減ってきたら、券売機やチャージ器を使って入金(チャージ)を行ないます。トランパスの積み増しとは違い、新しいカードが出てくるわけではありません。
- 2. manacaには無記名式・記名式・manaca定期券がある
- 無記名manacaは手軽さが特徴です。市バスの車内でも買えますし、家族や友人同士で貸し借りもできます。マイレージポイントもちゃんと付きます。その代わり、紛失しても再発行はできません。
記名式のmanacaは本人しか使えませんが、紛失しても再発行ができます。チャージ分も含めて、ちゃんと新しいカードに戻ります。また、manaca加盟店でのお買い物ポイント「たまルン」を利用できます(たまルンは名鉄系のmanacaに限ります)。manaca定期券は定期券をmanacaに組み込んだものです。定期券の性質上、一般に記名式になります。これも紛失しても再発行可能です。なお、無記名式を記名式に変更することはできますが、逆はできません。
- 3. manacaの購入
- 駅の窓口(改札口を除く)で買えるほか、manaca対応の券売機でも購入できます。無記名はもちろんのこと、地下鉄の場合は記名式manacaやmanaca定期券(通期定期)も券売機で買うことができます。なお、地下鉄と名鉄では券売機での販売に差があります。詳しくはこちらを。
定期以外のmanacaは2000円が基本です。地下鉄・市バスはほかに1000円、3000円、5000円、10000円の計5種類があります。トランパスは高いものほど「おまけ」(プレミアム)が多く付いてきましたが、manacaには「おまけ」はありません。安いmanacaを買っても、あとからチャージもできますし、どれを買っても同じです。
- 4. デポジットって?
- 上の表を見ると、manacaはおまけが付かないどころか、買った額より利用額が少ないことに気付きます。これは購入額の中にデポジット500円が含まれているためです。manacaは繰り返し使用するのが基本ですから、簡単に捨てられては困ります。そこで、預かり保証金の形で500円を払っておきます。これがデポジットで、SuicaやTOICAも同様の仕組みです。保証金ですから、manacaを返却すると、500円は返ってきます。
また、デポジットはmanacaを買うときにだけ、最初だけ必要です。チャージをしたり、お持ちのmanacaに定期券を載せるだけなら、デポジットはかかりません。
- 5. どこで使える?
- 名古屋市の地下鉄・市バス、名鉄電車、名鉄バス、あおなみ線、ゆとりーとライン、豊橋鉄道で使えます。
JRや近鉄ではいまのところ使えません。JR東海は約1年後、JR東日本は約2年後に利用可能予定のほか、他の電子マネー乗車券との相互利用も検討中です。
また、コンビニはサークルK・サンクス、ファミマ、ココストアの一部店舗で利用可能になる予定です。
- 6. お買い物ポイントを付けたいなら名鉄系で購入
- manacaの発行元は二つあり、購入した場所によって
- 名古屋交通開発機構 - 地下鉄・市バス・あおなみ線・ゆとりーとライン
- エムアイシー - 名鉄電車・名鉄バス・豊橋鉄道
このように分かれています。manacaの交通利用に関しては、どのmanacaを使っても変わりありません。しかし、manaca加盟店で買い物をしてポイントを得るたまルンというシステムは名鉄系のエムアイシーのmanacaでしか入会することができないんですね。「サークルKで買い物をよくするので、買い物ポイントを付けたい」なんて方は、名鉄などでmanacaを購入した方がいいかもしれません。
manaca定期券について
manacaはチャージして使うのが原則ですが、manaca定期券は必ずしもそうではありません。定期券としてだけ使うなら、チャージはなくてもかまいません。無記名式のmanacaは2000円(または1000円)しますが、最初からmanaca定期にすれば、定期代+デポジット(500円)だけで購入できます。もちろんチャージしておけば定期区間外の乗車にも使えますし、乗り越し精算も自動で行えますから、チャージしておくのも有効です。
さて、manaca定期券を持つにはいろんな方法があり、比較的自由です。
- 直接manaca定期を買う(定期代+デポジット500円が必要)
- すでに持っているmanacaに定期券を組み込む(定期代のみ必要)
- 磁気定期券をmanacaに発行替えする(デポジット500円のみ必要)
- 磁気定期券をすでに持っているmanacaに発行替えする(手数料なし)
地下鉄のmanaca定期券は、1番・2番もmanaca対応券売機で可能です。これまで地下鉄の定期は買える駅が限られていましたが、manaca対応券売機は地下鉄全駅に設置予定です。もちろん継続購入もmanaca対応券売機で可能です。なお、通学定期券は在学証明が必要なので、最初だけ窓口等での購入になりますが、継続購入は券売機で可能です。
また、定期代はチャージとは別に払います。チャージは定期代には充てられないので、注意しましょう。
マイレージポイント
manacaにはトランパスにあった「おまけ」がありません。5000円チャージしても、トランパスのように5600円にはならないのです。そのかわりに、マイレージポイントという仕組みがあります。これは1ヶ月の利用額に応じて、ポイント還元があり、電車やバスの利用に使えるという仕組みです。
- マイレージポイントの貯め方
- manacaで電車やバスを利用するだけで貯まります。ただし、定期代にマイレージポイントは付きません。チャージして利用した額だけに付きます。
- マイレージポイントの使い方
- マイレージポイントはカードにたまっていくのではなく、manacaのシステムを制御しているセンターに貯まっていきます。ポイントを使うには、センターからmanacaに引き出す手続きが必要になります。こう聞くとめんどくさそうですが、チャージの際についでに引き出しておけばよいでしょう。ポイントは月末に集計され、翌月の10日に引出し可能になります。また、ポイントをセンターに貯めておいてもかまいません(ただし有効期限はあります)。
manacaにポイントを移すと、電車やバスを利用したとき、ポイントから優先して使われます。
- マイレージポイントとトランパスを比べると…
- たとえば、地下鉄で1ヶ月5000円以上使うと、12%のポイントが還元されます。5000円ちょうど使えば、600円戻りますから、額面上はトランパスと同じに見えます。
しかし、トランパスのおまけは有効期間がありません。5600円のユリカを1年かけて使っても、600円のおまけは有効でした。これに対して、manacaのポイントは、1ヶ月の利用額によって決まります。1ヶ月に2000円未満ではポイントは付きません。また、2000円以上使った場合でも、1000円未満の端数は切り捨てられてしまいます。
- 地下鉄はまあまあ。名鉄は…
- 問題も多く見えるマイレージポイントですが、それでも地下鉄や市バスはまあまあです。1ヶ月に2000円以上使えば、最低でも10%、昼間の利用が中心なら20~30%のポイントが戻ってくる可能性があります。
一方、名鉄はポイント還元率がかなり渋チンです。回数券並の還元を得ようとすれば、1ヶ月に41回以上利用して、かつ2万円ぐらい使わなければなりません。1ヶ月に5,000円程度の利用では、200円ぐらいしか戻ってきません。これでトランパスも回数券も廃止というのですから、ちょっとねえ^^;
なお、マイレージポイントについては、以下の記事も参考にしてみてください。
参考リンク
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