2015年の春に向けて電化工事が行われている武豊線。電化開業に向け着々と準備が進められています。架線構造にはJR東海としては初となる「き電吊架線(インテグレーテッド架線)」を採用。車両の新製も進んでおり、第一陣として313系1300番台×4編成(8両)が神領車両区に本日新製配備されました。
武豊線は東海道線の大府と武豊駅を結ぶ19.3kmの路線。明治19年に、東海道線建設の資材を運ぶための鉄道として建設されたため、この地方最古の鉄道として知られています。国鉄時代は名鉄河和線と競合することもあり、利用率は芳しくありませんでしたが、JRとなって以降は名古屋までの直通快速の運行、ハイグレードな車両の投入など輸送改善が行われています。
全線単線で、最高速度は85km/h。ロングレール化は10%程度で、大半は50Nの24m定尺古レールを使用しています。
さて、JR東海といえば、在来線のインフラ投資には慎重な立場を見せてきました。とくに新規の電化は事実上皆無(JR貨物の要望・費用負担で電化したものはあり)で、国鉄時代に一部電化工事の進められていた高山線も凍結したまま。電化するよりも高性能なディーゼルカーを投入して、輸送改善を図る姿勢でした。実際、1999年に投入されたキハ75形は電車と遜色ない性能を持ち、車内もゆったりとした作り。個人的には日本一贅沢なローカル線ではないかと思っています。
そんなJR東海が武豊線を電化することにしました。一般に電化といえば、車両性能の向上により、スピードアップなどがなされるのですが、発表当時のリリースを見ても「スピードアップ」「増発」といった文字は見あたりません。
目的は「柔軟なダイヤの設定や弾力的な車両の増結などさらなる輸送サービスの向上や列車遅延時の対応能力の向上」とあります。電車並みの車両はすでに投入済みなので、あくまで車両運用の弾力性や効率性を図るのが目的としています。
その他推測を交えると、
こんなところが目的でしょうね。
さて、電化工事の進む武豊線の光景を見て、「何かが違う」と思った方もあったのではないでしょうか。私もその一人で、架線に従来と違うものを感じました。き電線を吊架線と統合した「き電吊架線」が採用されているんですね。最近のニュースリリースにもこのことが書かれています。
この「き電吊架線」は会社によって呼び方が異なり、インテグレーテッド架線との名称はよく聞くのではないでしょうか。JR他社や名鉄はいち早く取り入れていましたが、JR東海では初です。
従来の架線構造を下の図に示します。パンタグラフが接触して電気を流すトロリー線、トロリー線がたるまないように上から吊っているのが吊架線。さらに「き電線」が別途張られています。直流電化は比較的電圧が低いため、架線には大電流が流れます。トロリー線と吊架線だけでは送電損失が大きくなるので、これとは別に太いき電線を張り、大電流に備えているというわけです。き電線とトロリー線は一定間隔で電気的に接続されています。
一方、き電吊架線方式では「吊架線」と「き電線」を兼ねる方式。架線構造の簡略化を目的としていますが、トロリー線は規定の張力(引張応力)を与えておくため簡単に太くはできないので、吊架線を太い「き電吊架線」に変えています(下図)。
車両の話も書こうと思いましたが、長くなりましたので、記事をあらためます。
追記です。武豊線の電化開業は、ダイヤ改正に先立ち3月1日にとなりました。
さらに3月14日のダイヤ改正では、夕方の増発も行われます。
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