JR東海運用情報、みなさんから新ダイヤの情報を多数いただき、運用がどんどん判明しつつあります。情報をお寄せくださった方々に感謝いたします。
さて、今回のダイヤ改正に伴う運用変更で、注目を浴びているのが中央線の夕ラッシュ。編成両数が軒並み短くなっている減車です。春休み期間中であった改正直後はともかく、とかく新年度は混雑しますので、こんな両数で夕ラッシュを裁けるのか、といった危惧の声がネット上に上がっています。
そこで、本当に編成は短くなっているのか、何が原因でこうなったのか、考察してみることにします。
まずは、中央線の夕方ラッシュ時の下りパターンを見てみましょう。
基本を20分パターンとして、[快速|中津川]・[普通|多治見]・[普通|高蔵寺]、この3本が走るのを基本。これに[特急しなの|長野]と、[セントラルライナー|中津川]が、それぞれ1時間に1本入り、特急1・ライナー1・快速3・普通6の毎時計11本の構成です。
このうち、高蔵寺行きは毎時1本が愛知環状鉄道・瀬戸口まで延長運転。セントラルライナーの前を走る快速は瑞浪止まりになります。
さて、それぞれの列車の需要を考えてみると、
種別 | 行先 | 先行列車 との間隔 |
---|---|---|
快速 | 中津川(瑞浪) | ・・・・・・6分 |
普通 | 多治見 | ・・・・・・6分 |
普通 | 高蔵寺(瀬戸口) | ・・・・・・・・8分 |
であることが予想できます。長距離を走る列車ほど混雑するのはやむを得ないところです。そこで、ダイヤを構成するにあたり、先行列車との運転間隔を調整することで、なるべく混雑が偏らないようにしてあります。
具体的には、混雑する[快速|中津川]と[普通|多治見]について、先行列車との間隔を狭めて混雑を緩和。一方、[普通|高蔵寺]は先行列車との間隔を8分開けて、利用率を高めるようにしてあるというわけです。
このパターンは、17時台から20時台まで続き、現在の中央線の状況に適したダイヤだと思います。
では、編成両数はダイヤ改正を挟んでどう変わったのでしょうか。まずは、とくに減車がひどいとささやかれている、夕ラッシュピークの18時台です。改正前・改正後・増減をまとめてみました。また、適正外と言われる6両編成も着色してあります。
名古屋 発時刻 |
種別 | 行先 | 改正前後の両数 | ||
---|---|---|---|---|---|
改正前 | 改正後 | 増減 | |||
18:00 | CL | 中津川 | 6両 | 6両 | - |
18:02 | 普通 | 瀬戸口 | 8両 | 6両 | ▲2 |
18:08 | 快速 | 中津川 | 10両 | 10両 | - |
18:14 | 普通 | 多治見 | 7両 | 6両 | ▲1 |
18:22 | 普通 | 高蔵寺 | 7両 | 10両 | +3 |
18:28 | 快速 | 中津川 | 8両 | 6両 | ▲2 |
18:34 | 普通 | 多治見 | 7両 | 6両 | ▲1 |
18:40 | 特急 | 長野 | - | - | |
18:42 | 普通 | 高蔵寺 | 7両 | 6両 | ▲1 |
18:48 | 快速 | 瑞浪 | 8両 | 8両 | - |
18:54 | 普通 | 多治見 | 6両 | 6両 | - |
とまあ、ご覧のとおりで、確かに減車が目立っています。これまで7両ないし8両が中心だった編成が、軒並み6両編成が中心となっています。なかには、増車された列車(18:22発)もありますが、もともと7両の列車を10両に増やすぐらいなら、ほかの列車に回して欲しいとという声も聞こえてきます。
とくに激しい混雑が危惧されているのは、18:28発の[快速|中津川]の6両化です。ダイヤを調整して快速の混雑を緩和しているとはいえ、この時間の6両はやはり厳しいと予想されています。
個人的には、18:02・18:42発の普通列車が気になります。この2本の列車、特急やライナーの2分続行で名古屋を発車するため、信号で速度制限を受けてしばしば遅れます。遅れにより、先行する普通列車との間隔が10分以上開いてしまうこともあり、よく混雑するんですね。これが6両は痛いかもしれません。10両に増やすなら、18:22よりこっちの方が正解だったかもしれません。
このように18時台を見ると、混雑が増す方向であることが読み取れます。
次に19時台~20時台です。こちらも、快速の減車はあるものの、逆に増えている列車も目立ちます。どうも単なる減車とは言い難いようです。
名古屋 発時刻 |
種別 | 行先 | 改正前後の両数 | ||
---|---|---|---|---|---|
改正前 | 改正後 | 増減 | |||
19:00 | CL | 中津川 | 6両 | 6両 | - |
19:02 | 普通 | 瀬戸口 | 7両 | 8両 | +1 |
19:08 | 快速 | 中津川 | 8両 | 8両 | - |
19:14 | 普通 | 多治見 | 10両 | 10両 | - |
19:22 | 普通 | 高蔵寺 | 6両 | 8両 | +2 |
19:28 | 快速 | 中津川 | 7両 | 6両 | ▲1 |
19:34 | 普通 | 多治見 | 6両 | 10両 | +4 |
19:40 | 特急 | 長野 | - | - | |
19:42 | 普通 | 高蔵寺 | 6両 | 6両 | - |
19:48 | 快速 | 瑞浪 | 7両 | 6両 | ▲1 |
19:54 | 普通 | 多治見 | 8両 | 6両 | ▲2 |
20:02 | 普通 | 瀬戸口 | 7両 | 6両 | ▲1 |
20:08 | 快速 | 中津川 | 7両 | 8両 | +1 |
20:14 | 普通 | 多治見 | 7両 | 6両 | ▲1 |
20:22 | 普通 | 高蔵寺 | 6両 | 6両 | - |
20:28 | 快速 | 瑞浪 | 7両 | 6両 | ▲1 |
20:34 | 普通 | 多治見 | 6両 | 8両 | +2 |
20:38 | HL | 中津川 | - | - | |
20:42 | 普通 | 高蔵寺 | 7両 | 8両 | +1 |
20:48 | 快速 | 中津川 | 7両 | 8両 | +1 |
20:54 | 普通 | 土岐市 | 10両 | 10両 | - |
比較してきた中で、大きな変化にお気づきの方も多いでしょう。改正後に7両編成が見あたらないということです。
中央線の編成両数は、3・4・6・7・8・10と多数のパターンがあります。両数の組み合わせが多いと「停止位置を間違えやすい」という運転側の問題を有していました。また、奇数両数の列車は、編成の最後部位置を合わせて停めたいような駅(たとえば大曽根の上り)で、不都合が生じます。そこで、今回の改正では、7両編成を極力排除したようです。同様に奇数両数の3両編成は、ライナーを除くと、ここ数年のダイヤ改正でめっきり数を減らしていました。
とはいえ、7両がなくなったとしても、平均的に7両を確保した上で、列車や時間帯に合わせて編成を確保すれば問題はありません。たとえば6両編成と8両編成に組み替え、混雑する列車や時間帯に8両編成を優先的に充てれば、よいはずです。
ところが、中央線の場合、うまくいかない事情があるんですね。これには朝ラッシュの編成を考える必要があります。中央線の朝ラッシュは10両編成が基本で、組み合わせパターンは以下の2種類に大別できます。
さて、夕ラッシュから夜にかけては、翌朝のラッシュ時10両から編成を抜き取った形で運用されることが多いのですが、問題はここです。4+4+2は2両を抜いて8両編成が組めますが、4+3+3のパターンでは、7両を組まないとすると、10両編成のまま運用するか6両編成しか組めないことになります。朝ラッシュのパターンも4+3+3の方が多いので、必然的に6両編成が増えてしまうわけです。
これを踏まえて、もう一度両数の変化を見てみると、7両が軒並み6両になった一方で、10両に増えた列車が散見されるという、二極化ダイヤになっていることがわかります。その一方で、8両編成の総数はさほど変化がありません。
名古屋 発時刻 |
種別 | 行先 | 改正後 編成 |
---|---|---|---|
21:42 | 普通 | 高蔵寺 | 6両 |
21:50 | HL | 中津川 | 6両 |
21:54 | 普通 | 瑞浪 | 6両 |
22:02 | 普通 | 高蔵寺 | 6両 |
22:08 | 快速 | 中津川 | 8両 |
22:14 | 普通 | 多治見 | 8両 |
22:26 | 普通 | 高蔵寺 | 6両 |
22:36 | 快速 | 中津川 | 10両 |
: | : | : | : |
23:06 | 快速 | 中津川 | 10両 |
: | : | : | : |
23:58 | 快速 | 瑞浪 | 10両 |
さらに遅い時間帯を見てみましょう。ホームライナーが1本廃止になり、変わりに快速が1本増発された時間帯です。ダイヤが変わっていますので、改正前後の比較はできません。
この時間帯で特徴的なのは、快速が長編成だということです。23時以降の快速も抽出してみましたが、やはり10両編成で、改正前と比較してもむしろ増車の傾向にあるようです。夕方だけ見ると、「快速を減車して車両キロをケチっているのでは?」とも思いましたが、トータルはそれほど変化がないというところでしょうか。ただ、この時間帯に10両を持ってくるのなら…、という批判もありそうです。
ここまで見てきて思ったのは、全体にバランスが悪いなあということです。18時台より20時台の方が輸送力として大きいように思いますし、混雑する列車とそうでない列車の編成バランスも、ちぐはぐな感じがします。
さて、なぜこうなったのか、一つ考えたのは、今回の改正は朝ラッシュの混雑緩和に注力したのではないか、という点です。以前の記事で取り上げましたが、今回の改正では朝ラッシュのダイヤにえらく余裕を持たせて、混雑による遅延に備えています。さらに、朝ラッシュのピークの編成を見ても、改正前はバラついていましたが、改正後は編成をなるべく揃える配慮をしているんですね。
このように改正前は、313系を付ける位置が前だったり後ろだったり、3両だったり4両だったり、と様々だったのですが、改正後は一部を除いて後ろに2両または3両で統一されているようです。
7両を排除・朝ラッシュ対策を重点に、この二つに重きを置いた結果、そのしわ寄せが夕方に来てしまったのかもしれません。これが、吉と出るか凶と出るか、まずは学校の休みが明ける来週からの状況に注目してみましょう。