JR東海・名古屋市交通局・名鉄の3社局は、電子マネー乗車券TOICA・manacaの相互利用サービスを来春平成24年4月21日に開始することを発表しました。manacaでJR東海を利用したり、TOICAで名古屋市営地下鉄や名鉄を利用できるようになります。
これに合わせ、名古屋地区ではほとんど発売されていなかった連絡定期券も新たに登場。TOICA1枚でJRと地下鉄の定期、manaca1枚でJRと名鉄の定期などが作れるようになります。
その一方で、買い物に利用する電子マネー機能の相互利用はお預けです。平成25年春に予定される全国主要ICカード乗車券の相互利用開始まで、さらに1年ほど待つ必要があります。
ここで簡単にTOICAとmanacaについておさらいしておきます。
TOICA | manaca | |
---|---|---|
サービス開始 | 2006年 | 2011年 |
乗車対象 | JR東海 | 地下鉄・市バス 名鉄電車・名鉄バスあおなみ線・豊鉄電車ゆとりーとライン |
発行枚数 | 121万枚 | 195万枚 |
相互利用 可能カード |
Suica (JR東日本) ICOCA (JR西日本) SUGOCA (JR九州) |
なし |
TOICAはJR東海が発行する電子マネー乗車券。2006年よりサービスを開始。現在の発行枚数は約121万枚。JR東海の各線のほか、JR東日本のSuica、JR西日本のICOCA、JR九州のSUGOCAなどととも相互利用が可能で、首都圏や関西などのJRも利用できます。電子マネー機能もあり、セブンイレブン・ローソン・ミニストップなどで利用できるほか、相互利用カードが多いので、他地域へ行っても買い物に利用できます。
一方のmanacaは、名古屋市交通局や名鉄など、中京地区の私鉄・公営交通などによる電子マネー乗車券。今年の2月に登場したばかりですが、すでに発行枚数は195万枚に達し、TOICAを凌駕しています。しかし、登場して間もないこともあり、相互利用できるカードはまだありませんでした。電子マネーとしての利用も愛知県下のサークルKサンクス、ファミリーマートの一部に限られます。
では、この両者の相互利用によって可能になること、不可能なことをまとめてみましたので、まずはご覧ください。
項目 | 備考 | |
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可能 | TOICAで名鉄や地下鉄に乗る | 一部利用でき ない路線あり |
manacaでJR東海に乗る | ||
TOICAでJRと地下鉄(名鉄)との連絡定期を作る | 経路が連続している 必要あり |
|
manacaでJRと地下鉄(名鉄)との連絡定期を作る | ||
不可 | manacaでJR東日本を利用する | Suicaとの相互利用は 平成25年予定 |
Suicaで名鉄や名古屋市営地下鉄を利用する | ||
manacaでJR東海だけの定期を作る | 連絡定期は 相互利用に限る |
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TOICAで名鉄だけの定期を作る | ||
TOICAでマイレージポイントを貯める | ポイント・割引制度は manacaに限る |
|
TOICAで地下鉄・市バスの乗り継ぎ割引を受ける | ||
manacaを使ってセブンイレブンで買い物 | 電子マネー相互利用は 平成25年予定 |
まず、TOICAを使って名鉄や地下鉄・市バスなど、manacaが利用可能な電車・バスにはすべて乗ることができるようになります。その逆も可能で、manacaでJR東海の路線(TOICA利用可能区間)に乗車できます。ただし、manacaが相互利用するのは平成24年の段階ではTOICAだけですから、首都圏や関西のJRで使うことはできません。
乗継ぎ | TOICA | manaca |
---|---|---|
JR-地下鉄 | 可能 | 可能 |
JR-市バス | 不可 | 可能 |
JR-地下鉄 -市バス |
不可 | 可能 |
JR-名鉄電車 | 可能 | 可能 |
JR-あおなみ線 | 可能 | 不可 |
JR-豊橋鉄道 | 可能 | 不可 |
JR-名鉄バス | 不可 | 不可 |
名古屋にいると馴染みがないのですが、首都圏などでは、2社にまたがる連絡定期券が当たり前に発売されています。1枚の定期券にJRや私鉄の定期が乗っかっているわけですね。
今回のTOICA・manacaの相互利用により、JRと地下鉄、JRと名鉄の連絡定期を作ることが可能になります。TOICAにJRと地下鉄の定期をまとめて載せたり、1枚のmanacaにJRと名鉄の定期を載せることが可能になるわけです。
連絡定期は経路が一本につながっていることが条件です。指定の乗換駅で乗り換える定期でないと作れません。ニュースリリースに詳細が載っていますが、あまり制約が見あたりません。TOICAが利用可能なJR東海のかなりの駅で、連絡定期を作ることができるようです。変わったところでは、JR東海~地下鉄~市バスなんて定期も1枚のmanacaに載せられます。
ただし、連絡定期が作れないケースもあるようです。まず、ニュースリリースを見る限り、JR東海~名鉄バスの組み合わせが書かれていません。JR東海~市バスは可能なのですが、manacaに限ります。また、3社局以上にまたがる定期や、名鉄~JR東海~名鉄は無理のようです。たとえば、名鉄本線~JR中央線~名鉄瀬戸線の方は対象外となります。
また、あくまで連絡定期券ですので、manacaにJRだけの定期を載せたり、TOICAに名鉄だけの定期を載せることはできません。
電子マネー乗車券の相互利用は基本的によいことではあるのですが、実は困る人も出てくるような気がしています。たとえば私です(笑)。
JRと地下鉄を乗り継いで通勤している人は多いと思います。私もそうです。ではお聞きしましょう。
「地下鉄は定期券で乗っていますか?」
はい、私もそうなんですが、地下鉄の定期券は割引率が低いので、以前は回数券、現在はmanacaチャージ利用+マイレージポイント還元利用の方が多いと思われます。つまり、地下鉄は定期でない人がかなり多いはずなんですね。このような人は、相互利用が始まっても
JRは定期が安いですから、通勤する場合はまず定期でしょう。manacaにJRだけの定期は組み込めないので、TOICAを持つ必要があります。一方で、地下鉄のマイレージポイントは通勤なら10%は還元されますから、manacaが有利。結局、TOICAとmanacaを2枚持つことになります。
これだけなら、今までと変わりません。しかし、新たな問題が発生します。それは、manacaでJRに乗れてしまうということです。「乗れてしまう」というのも変な表現ですが(笑)、つまりTOICA定期を持っているにもかかわらず、間違えてmanacaで料金を払ってしまう可能性がある、ということです。
これまでは、JRの改札でmanacaをタッチすれば、エラーになりました。しかし、来春からは違います。エラーにならずそのまま改札を通れます。うっかり間違えて、manacaをJR改札でタッチすると、定期を持っているのにチャージが減るってなことになるんですね^^;